仕返しが思わぬ人へ誤爆してしまった話

私たち夫婦は今年14年目を迎える。

結婚して1年経たないうちに長女を出産したので、長女の年齢を数えれば、それは私たち夫婦の結婚年数と同じだから、わかりやすいと思っている。

結婚して14年目ともなれば、夫婦間の意思疎通や喧嘩の仕方も変わってくる。

旦那は体が大きく、体力があり力なども強い。

その一方で心はとても繊細で、そんな自分の心を守るために、普段から語気が強く、血の気が多く、プライドの高い面倒なタイプの人なのだ。

10歳の年齢差があり、私がかなり年下でありながら超強気なタイプということも相まって、結婚当初から今に至っても、お互いに譲らない忖度のない口喧嘩というのは定期的におこる。

しかし年を追うごとに喧嘩の頻度は減り、この1ヶ月は喧嘩していないのではないかと記憶している。

それもひとえに、全て私の努力と対応の工夫のおかげなのだ。

長年の言い争いで辟易とした私は、精神年齢が10歳も20歳も進んでしまい、今や仙人のようになってしまった。

最近は旦那に腹の立つことがあっても、よっぽどのことがない限り、直接文句を言ったり怒ったりすることは無い。

先日は、何か料理をしているときに棘のある言葉を言われた(ような気がした)ので、腹いせに卵のパックを開けるときの長いオレンジ色のシールを背中に貼り付けてやった。

そのシールは夕飯の時に子どもが気がつくまで、誰も気づくことなく背中に貼られたままだった。

また別の日は、22時にもなってまだ遊んでいる次女と長男に、寝るようさまざまな声掛けをし、最終的に「寝ろ!」と一言凛々しく吠えた。

それだけなのに、旦那に「そんな言い方をしてはいけない」といったようなことを言われた。

私にとっての「寝ろ!」はヤンキーのそれではなく、「寝たまえ!」といった表現の親しみ版である。だから注意されたことについては的を得ておらず、納得がいかない。

子どもが寝る時間なのに遊んでいる状況を知っておきながら、一言も何も言わないあなたは何?とさえ思う。

そこで私は、奥にある小さな部屋に隠れることにした。

これは時々する腹いせの方法だが、私がいないと子どもの面倒を見る人がいなくなり家庭の秩序が乱れるので、結果的に旦那は困ることになり、最終的に、私を探し求めた際に驚かされるという一連の罰である。

隠れると見つかるまで時間がかかることがあるので、スマホは必ず持参する。

・・・そして真っ暗の中で、ゆっくりとXを楽しむ。

22時30分ごろになってようやく、旦那が「早く寝なさい」と子どもに言う声が聞こえた。

(しめしめ)と思いながら、引き続きXを楽しむ。

案の定、そんな優しい言葉では子どもは動かない。

キャーとかピーとか、楽しそうな子どもの声は続く。

「こら!パパはさっきなんて言った?寝なさい!」

「何してんの、もう寝なさい!」

などの声かけが頻繁になり、それと同時に「ママはどこに行ったんだ。」と私を探している様子になる。

この段階になると、私はいよいよ準備を始める。

いつでもスマホをポケットに入れられるよう姿勢を整え、驚かすタイミングや体制を脳内でシミュレーションする。

程なくして、こちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。

私はスウっと息を吸い込み、ドアが半分開いた瞬間に、「わ!」と躍り出た。

するとそこには、ママを探す8歳の次女がいた。

「うわ〜ん!」と泣き出した次女は、ダダッと皆の方へ逃げていく。

(しまった〜次女だったか!)と、私はネズミ男のように背中を丸めてヒョコヒョコと次女を追いかけた。

旦那が「なんで寝る前に興奮させるんだ!」「驚かしてはいけない!」などと怒りながら、泣いている次女をなだめている。

私は、「いや〜パパだと思って脅かしたんだけど、次女だったんだね〜。ごめんね〜。」とヘラヘラしながら謝る。

長女と長男はその様子をしっかり観察していたようで、ゲラゲラと笑っている。(だいたい面白いことが起こるといつも、見逃さないように観察しているのだ)

「ママ、驚かした後でトトトって!(追いかける動きを真似る)」「次女だとわかって、まずい!って思ったんでしょ。」と、長男に笑いながら言われる。

「そうそう、パパだと思ったら次女だったから、やべ〜って思って」と、私も、もう一度ヒョコヒョコと走って見せた。

そうやってゲラゲラ笑っていたら、旦那が「笑い事じゃない!謝りなさい!」などと言う。

私は「いやさっき謝ったのに。」と納得していない意思表示をしつつ、もう一度、「どうもすみませんでした。」と次女へ深々とお辞儀をした。

次女は、泣いている傍ら、私と長男が笑って話しているのをしっかり聞いていて(いつもそう)、旦那に慰められながらも「フフッ」と笑っていた。

そのあと、泣き笑いのような複雑な顔で私のところへ来て抱きつき、「ママ、もう気をつけてよね!」などと言い、笑うのであった。

今日の仕返しは、思わぬ人へ誤爆してしまった失敗談だが、こういうストレートではなくカーブをかけた仕返し(腹いせ)は結構使えるからおすすめだ。

私は思ったことをストレートに言うと、言葉のチョイスが絶妙で図星すぎて、言った人(旦那)に刺さり過ぎてしまい相手を逆上させてしまうので、こんなふうに仕返しするようにしている。

良心を傷めることなく腹いせができるし、面白いし、結果的に皆で笑えたりする。

もし夫婦間でギスギスしやすいのなら、どちらかが、どこかネジが緩んでいるような隙があるようなコミュニケーションで、笑いを取り入れてみてほしいと思う。

きっと楽しいよ。